2017年の春、それまでJR東日本の旧社宅だった築50年以上の2棟の建物がリノベーションされ、「高円寺アパートメント」という名の新たな賃貸住宅として生まれ変わりました。そこからアパートメントで暮らす住人たちは日々の生活を積み重ね、協力して行うイベントや季節行事などを通して、互いに繋がり合う関係を育んでいます。そんな高円寺アパートメントの「日常」を住人たちはどう感じているのか、みなさんの言葉を紹介します。
ヒロシゲさん(2017年のスタート時から入居)
「最初は“1階にお店が入ります”ということぐらいしか聞いていなかったので、住人同士が関わる機会をつくってイベントを開いたりする場所だということは、まったく知らないまま入居しました。“集まってご飯会をやりましょう”というお誘いも初めのうちは戸惑いがあって、他に出かける予定があれば特に参加しないという感じで、しばらくは過ごしていたんです」
スンコさん(ヒロシゲさんの妻)
「タイミングが合った時はたまにイベントにも参加していたけど、普段の生活の中で他の住人さんと顔を合わせる機会が増えたり、1階のお店を利用した時に会ったりすることで、だんだんよく話すようになっていきました」
ヨウスケさん(同じく初期からの住人)
「一番最初のご飯会には顔を出したんですが、ちょっと気後れしてしまって、あまり会話に参加できなかったですね」
ユキエさん(ヨウスケさんの妻)
「“無理無理、おしゃれな人たち怖い!”って思っちゃいました。今思い返してみると、そんなに構えることはなかったのかもしれないですけど(笑)。それからしばらくは集まりに参加しなくなって、ようやくみなさんと仲良くなったのは、コロナ禍になって子供が生まれてからです」
けやきさん(コロナ禍の真っ最中の2021年入居)
「コロナの影響でまったくイベントが開かれていない時期で、誰かの部屋に少人数でちょっとだけ集まろうかという感じだったから、逆に仲良くなりやすかったかもしれないです。もっと全員、ソーシャルな人ばかりが住んでいるのかなと想像していたんですけど、全然そんなことはなくて(笑)、思ったより普通の日常でよかったなと思いました」
たおさん(けやきさんの夫)
「僕は人見知りな性格なので(笑)、人付き合いが苦手だったんですけど、住人さんと顔見知りになっていくうちに、普段すれ違った時に挨拶するような、簡単なところからの近所付き合いが実は素晴らしいんだなとだんだん気づいたんです。社会人になってからの、仕事上の付き合いじゃない友達関係って、本当にありがたいなと思うようになりました」
まっちゃんさん(同じくコロナ禍の2020年に入居)
「イベントをやるとか住人同士のコミュニティがあるとか、何も知らずに内見したんですけど、最初に“ここのアパートメントにはサラさんという女将がいます”って聞かされて、“何それ?”と思ったんですよね」
きささん(まっちゃんの妻)
「内見の帰りに女将を訪ねて“まめくらし研究所”を覗いたら、ものすごい“ゆるふわ”な女の人が出てきて、“割烹着を着てない!(笑)”というのが第一印象でした。引っ越してきてすぐにサラさんが“みんなでご飯を食べましょう”って歓迎会を開いてくれて、それをきっかけに3~4世帯くらいとすぐ仲良くなりました」
高円寺アパートメントの1階にある6店舗のうち、「まめくらし研究所」は住人同士の関わりや地域との繋がりをサポートする役割も担っていて、店主であるサラさんが“女将”としてアパートメントの運営に携わっています。
サラさん(「まめくらし研究所」店主/女将)
「私もいち住人なので、アパートメントの当事者として暮らしながら、女将としては住人さん同士や地域の方々と関わり合うきっかけをつくったり、芝生で行うイベントなど住人さんが“こんなことやってみたい!”と言ってくれたことのサポートをしながら、みなさんと一緒に日常を育んでいます。“女将”という肩書きは、“管理人”のようにお掃除や整備をする人ではないし、“コミュニティマネージャー”もなんだかしっくりこなくて、気軽に呼んでもらえるかなと思って決めました。でも、みなさん”サラちゃん“と名前で呼んでくれています(笑)」
みほさん(コロナが明けてからの比較的新しい住人)
「入居する前は、大きなイベントがある時にそこで住人同士が知り合うみたいな感じを想像していたんですけど、最初に参加した忘年会からすごくウエルカムな空気感で、自然に仲良くなってお互いの家を行き来したり、ゆるい感じの集まりも多かったりして、それがすごくよかったです。サラさんがまとめ役のような役割ではあるけど、だからと言って特別な存在ということもないし、他の人たちもみんなフラットな立場なのがいいなと思いました」
長(ちょう)さん(みほさんの夫)
「新しく引っ越してきた人にもサラさんが真っ先に声をかけてくれるから、軽い気持ちで集まりに参加してみようかなと思えるんですよね」
みゆきさん(以前の住人の友達。その後自分も入居)
「友達を通して他の住人さんの雰囲気も知っていたから、面白そうな場所だなと思っていたんですけど、実際に中に入ってみても、みんな優しくてすぐに受け入れてくれたし、ご飯会とかよくやって仲良くなりました。新しく引っ越してきた人がいれば、今度はサラちゃんと一緒に声をかけて、私がご飯会に呼んだりして。……でも、住んでから3年くらい経って、真剣に引っ越しを考えるようになったんです。私たち5階に住んでいたんですけど、私が膝を壊して5階まで階段を上り下りするのが“もう無理!”ってなっちゃった」
ひろきさん(みゆきさんの夫)
「僕は事前にここのことを何も知らないまま引っ越してきてたんですけど、この環境がすごく居心地よくなって、まだしばらくは住んでいたいなと思うようになっていました。だから“5階のままでよくない?”って言ったんですけど――」
みゆきさん
「私がもう限界で(笑)。そのタイミングでたまたま2階の部屋が空くと聞いて、ぜひそっちに移りたいってお願いしたんです。内部で引っ越しするのも決してラクではなかったですけど、膝は本当によくなりました」
ひろきさん
「同じアパートメントの内部で引っ越してまで住み続けるのって、周りから見たら、よっぽどこの場所に住みたいんだなと思われるかもしれないけど、まあ、その通りだったんです(笑)」
シンドーさん(2017年の初期からの住人)
「東京で暮らしていると、近所に住む人たちと一切関わらなくても生きていけてしまうことが、むしろ気が楽だなとずっと思ってきたけど、ここで暮らして他人と関わることが当たり前になった時に、共同生活の楽しさとか心地よさに気づいたんです。これがコミュニティということなのかと、初めて理解できた気がしました」
スンコさん
「私、シンドーさんが前に言っていたことが、すごく好きなんですけど、知らない人同士だから近所づきあいが面倒くさかったり嫌になるんだったら、知っている人にしちゃえばいいんだ、って。あれは本当に、その通りだなって思いました」
シンドーさん
「基本的に人見知りなので、そうやって自分を奮い立たせようとしたんですけど、別に無理して人付き合いしようと思わなくても、ここはすごく自然にみんなが構ってくれるので(笑)、本当にありがたいなと思っています」
ユキエさん
「コミュニティって言うと大袈裟に感じるけど、結局、個別の人間関係があるだけなんだと思います。それぞれちょっとずつ知り合ったり喋ったりして仲のいい人ができて、それをきっかけに、じゃあ私も集まりに参加しようかなってなったりするわけで」
きささん
「同じ建物に住んでいるという以外、全員の共通点がないのに、話せる機会があるのがすごいことですよね。いろんな人から自分の知らない世界の話を聞けるのが楽しくて。うちは子供がいないけど、ここのお母さんお父さんたちとも関わって仲良くなれるから、みんなで子育てしているみたいで面白いです」
けやきさん
「“みんな全員で仲良くしましょう”という雰囲気じゃないから、別に気の合う人とだけでも構わないし、すごくいい距離感で関わり合っていると思うんです。その曖昧さがいいところで、居心地のよさをみんながそれぞれ取捨選択しているから、絶妙なバランスで成り立っている。“あえて秩序をつくらない”みたいなことが、みんなの意識下にあるのかなと思います」
サラさん
「私、以前まっちゃんさんが高円寺アパートメントについての取材を受けた時に、“ゴミを拾うんですよね”っていう話をしていたのが、すごく印象に残っているんです」
まっちゃん
「だって、ここの場所に愛着が生まれているから、共有スペースにゴミが落ちていれば拾うし、風の強い日に自転車置き場で自転車が倒れていたら、ちょっと直しておこうとか、普通に思ったりしません?」
ヒロシゲさん
「お互い顔も知っているから、ゴミ置き場もちゃんとキレイに使おうかなとか、自然に考えますよね。昔住んでいたところでは正直そこまでの意識はなかったけど、ここだと自分が捨てたものじゃなくてもちょっと片付けようかなという気にはなる」
まっちゃん
「知っている人同士が一緒に生活している共同体なんだからっていうのが、一番大きいですよね」
高円寺アパートメントで生まれている日常や関わりなどを住まい手目線でお伝えします。
暮らしているからこそ見えてくる、アパートメントの日々をのぞいてみてください。