高円寺アパートメントでは春と秋の年2回、いつも以上にまちに開かれた大きな規模のイベントを開催しています。春はさまざまな物販や飲食店などの出張販売を中心にした「マルシェ」が、秋には1階店舗の「アンドビール」の呼びかけで各地のブルワリーを招いて飲食物の販売と物販を行う「ビアフェス」が、1階店舗前の芝生広場を中心に行われます。「マルシェ」の開催時期は年によっても変わりますが、おおむね4月後半から6月初旬までのどこか1日、「ビアフェス」は毎年10月末に高円寺の街なかを広く使って開催される「高円寺フェス」の一環としてフェス開催日に合わせて開催。外部からのお客さんに対してだけでなく、普段の行事や集まりにはなかなか参加できない住人さんたちにも気軽に参加してもらえる機会として、アパートメントで日頃から育まれている関わり合いをもとに、住人たちの手で企画・運営されています。
サラさん(1階の店舗「まめくらし研究所」店主)
「“マルシェ”は当初、高円寺・阿佐ヶ谷など近隣地域にお住まいのみなさんや、それ以外の場所から高円寺を訪れる方々に、高円寺アパートメント自体や1階に入る店舗の存在を広く知ってもらい、足を運んでいただけるための周知活動のひとつとして開催したものでした。その際に、アパートメントの住人さんに“準備を手伝ってくれませんか?”とお誘いして一緒にやったのが楽しかったので、もっと住人さんたちとマルシェをつくっていきたいなと思って、2回目からはみなさんに企画の段階から深く関わってもらい、より住人さんたちの手で企画・運営するイベントになっていきました」
シンドーさん(初期からの住人。マルシェは毎回参加)
「こういった対外向けのイベントに他の場所でも関わっているサラさんや“いちまるいち”のわたるさんが最初にかじ取りをしてくれたので、イベントの運営なんてやったことがないはずの住人さんも、積極的に取り組んでいける道筋ができたんだと思います。その中でアパートメントを紹介する展示企画が生まれたり、住人が独自に物販等を行うブースも、回によって規模が大きくなったりしました」
コロナ禍の2020年春にはマルシェが中止になってしまい、そこから約2年間の空白期間が生じましたが、事態が落ち着きを見せ始めた22年の5月に、マルシェの開催も復活しました。
サラさん
「コロナが落ち着いてきたことで“やっとマルシェができる!”と思ったのですが、その時は時間的な余裕がない中で、開催を急いでしまったんです。一部のメンバーだけで準備を進めることになってしまい、他の住人さんたちに自分たちのイベントだという実感を持って参加いただけなかったことの反省がありました。そこで、“自分たちの暮らしを自分たちで楽しくするためのマルシェ”という方向付けを、改めて住人同士で話し合ったんです。次の年からは、より住人主体の企画にシフトしつつ、日常の延長として個々の趣味嗜好や特技を共有できる場が生まれたり、誰かが“やってみたい!”と思ったことを気軽に実現できるように、アイディアを出し合っています。展示企画では、当日は参加できない人も楽しめるようにと、事前に集まって制作したり、おすすめの近隣のお店マップを住人さんたちがGoogle mapで日常的に見られるようにしよう!とアイディアを出してくれた方がいて、その後にもつながる企画になりました」
一方、2024年で5回目を迎え、秋のイベントとしてすっかりおなじみになった「ビアフェス」は、1階にある自家製クラフトビールとスパイスカレーのお店「アンドビール」の発案で、2018年から始まりました。
ゆりこさん(「アンドビール」の醸造を主に担当)
「お店の前の芝生のスペースを、アパートメントの住人さんたちが日常的に利用している楽しそうな感じをいつも見ていて、せっかくだから、この場所で私らも何かやってみようかなと考えたのが、最初のきっかけだったと思います。それで、日頃からお世話になっている各地のブルワリーに声をかけて、この芝生で“ビアフェス”をやろうと思いました。その頃、アンドビールとしても醸造を始めて2年目くらいだったし、ビールを中心にしたイベントを成功させれば、ブルワリーとしても名を馳せることができる。経営上の戦略として、周りにそういう印象を与えたかったということもありました」
こうじさん(「アンドビール」の料理を主に担当)
「地域に開かれたイベントをやりたいという話は、それ以前からもしていました。お祭りごとって、誰か他の人が用意したものに乗っかるよりも、自分たちでつくって自分たちが思うようにやったほうが何倍も面白いっていう、“文化祭理論”みたいなものがあるじゃないですか(笑)。経営上の問題だけじゃなくて、達成感とか新しい人たちとの出会いとか、いろいろ複合的に得られるものもあるだろうから、せっかくなら挑戦していこうという気持ちはあったと思います」
アンドビールの呼びかけに多くのブルワリーさんが応えて、ビアフェスは1回目から大盛況。マルシェにも出店している飲食や物販のお店と住人企画によるブースも参加して、ビールだけではないプラスアルファの魅力がたくさんあるイベントとして好評を得ました。その後、春のマルシェと同様にコロナ禍の間は中断を余儀なくされましたが、マルシェが復活したのと同じ2022年にビアフェスも復活。24年にはブルワリーに加えて、アンドビールが新しい醸造所を開設した山梨県で知り合ったワイナリーにもいくつか参加してもらい、「ビール&ワインフェス」として開催しました。
ゆりこさん
「ブルワリーを集めて出店してもらうという大枠の部分はアンドビールが運営していますが、それ以外のところでは住人さんたちが主体的に企画を考えて実践してくださっているので、そこでみなさんが楽しんでくれていれば幸いです。できれば、出店してくれたブルワリーさんにもそれが届いて、また別の繋がりが生まれていけばいいなと思っているんですけれども。今後も変わらずビアフェスは続けていきたいです」
サラさん
「アンドビールは、住人さんたちみんなの“食卓”みたいな位置づけで、カレーを食べに、ビールを飲みにいけば、とりあえず知り合いが誰かいる、みたいなことが日常的に起きています。他のお店でもそういう機会が生まれていたり、芝生広場と同じように住人さん同士を繋ぐ接点になっているので、だからこそ、こうしたイベントや行事を一緒に開催できているんだなと感じます」
また、この2大イベント「マルシェ」と「ビアフェス」が開催される際には、同時に住人有志の企画による「住人フリーマーケット」が毎回、開かれています。
まっちゃんさん(住人フリーマーケットの中心人物)
「僕が引っ越してきたのはコロナでイベントが中断している期間だったので、僕からフリーマーケットをやりたいと言い出したわけではなくて、住人フリマ自体はそれより前からずっとやっていたと聞きました。学生の頃から何度かフリマには出店したことがあったので、懐かしいなと思って、フリマがあるならぜひ参加したいですと言ったのが最初です」
きささん(まっちゃんの妻)
「私が仕事で使う食器のストックが大量にあったのでフリマで販売したんですけど、その時の物量がえげつなかったから(笑)、それで一気に“フリマの人”みたいに思われちゃったんじゃないかな?」
まっちゃんさん
「その次の回から、“アパカリ”という高円寺アパートメント独自のフリマのシステムを始めてみたんです。不用品を整理したい時に、いわゆる“メルカリ”とかを使うと送料もかかるし、知らない誰かに売るよりもアパートメントの中でいろんな物が循環できるんじゃないかと思ったんですよね。もちろん、フリーマーケット自体がそういう場ではあるんだけど、それをさらに面白くしたいなと思って、アパートメント内でやるんだから“メルカリじゃなくてアパカリだ!”と(笑)。勝手にロゴとかも決めてつくっちゃいました」
スンコさん(フリーマーケットに毎回出店)
「“住人フリーマーケットです”って、ただ言っているだけじゃお客さんにもそんなに注目してもらえないし、もっと多くの住人さんに出店する気になってもらうことも大事だなと思ったので、まっちゃんのアイディアとロゴが楽しそうだったから、“アパカリ”のチラシとか出品するものにつける値札のタグとか、いろんなものをデザインさせてもらいました」
まっちゃんさん
「僕は単に思いついただけなんで、アパカリのパッケージをつくってくれたのはスンコさんです。僕はフリマにもまったく抵抗がないけど、実際に参加するのって心理的なハードルが高い人もいると思うんですよね。出店するにも結構労力が要るから、面倒なところはすっ飛ばして、一品からだけでも出品できるようなシステムをつくろうかなと。そこで住人からの販売委託みたいなことも受けるようにしたんですけど、その時に売る人の“思い”を書いてもらうのはどうかなと思ったんです。この商品をどうやって手に入れたとか、どんな思いで使ってきたかとか、どうして手放すことにしたのかとか、売る側の思いを“ストーリー”にしてもらって、その情報を出店者が共有する“ストーリーフリマ”という企画にまで膨らんだ。いろんな住人さんのアイディアが集まった結果です」
サラさん
「そのストーリーという発想が素晴らしかったんですよね。売れても売れなくても、ストーリーを書くということ自体をいろんな住人さんが楽しんでくれたし、それを読むだけでもすごく面白かった」
まっちゃんさん
「だんだん住人さんたちの出店も増えてきて、前回(24年)のビアフェスの時は、別の用事があったせいで僕は参加できなかったんですけど、それでもフリマはいつも通り盛り上がったと聞いたから、ちょっと悔しくなりました(笑)」
高円寺アパートメントで生まれている日常や関わりなどを住まい手目線でお伝えします。
暮らしているからこそ見えてくる、アパートメントの日々をのぞいてみてください。