高円寺アパートメントがスタートした2017年当初、子育て世帯の入居数はごくわずかでした。住人同士が関わり合う環境が本格的に動き始めた同年秋の時点では、子供がいたのはひと世帯だけ。そこから新しく子供が生まれたり、すでに子供がいるご家族が入居したりして、今では子育て世帯の比率は2割を超えるほどになりました。
アヤコさん(長男が1歳前〜約5年暮らした元住人)
「初めはうちの長男が唯一の子供だったので、みんながとても可愛がってくれました。外の芝生で子供を遊ばせていると、1階の“いちまるいち”のわたるさんが在宅されていることが多かったのでいつも構ってくれたり、住人さんが誰かしら声をかけてくれたりして、野放しにしていても割と平気というか(笑)。子供たちはただ走り回っているだけで楽しそうだから、車の心配をしなくてもいい共用の広い芝生があることが本当にありがたかったですし、いつも誰かが見てくれている安心感がありましたね。夫は仕事が忙しくて集まりにはあまり参加できなかったんですけど、自分が留守にしている分もみんなが息子の面倒を見てくれることにとても感謝していて、“ここはプライスレスな場所だ”と、よく言っていました」
スンコさん(初期からの住人。入居後に長男が誕生)
「1歳上と2歳上の子がアパートメントにいたから、すくすく育っている様子をいつも見ていて、自分の子供が大きくなっていくイメージがしやすかったんです」
ヒロシゲさん(スンコさんの夫)
「うちの子が3歳ぐらいの時に、やたら笑いっぱなしで芝生で遊んでいた日があったんですよね。特別なイベントがあったわけでもないごく普通の日で、いつもと同じようにいろんな住人さんに可愛がってもらっていただけなんですけど、めちゃめちゃ楽しそうで。その時、不意に“うちの子、こんなに笑うんだ”と思って、なんかいいなって急に実感しました」
やすしさん(長女が1歳半のコロナ禍に入居)
「近い年齢の子供たちが何人かいたので、たまたま外に出た時に芝生で偶然会うのが貴重な機会だったんですよね。その頃は、今みたいに子供たちがたくさん増えるとは想像していなかったから、今のにぎやかさも素直に嬉しいです」
はるかさん(やすしさんの妻)
「うちが引っ越してくる前は男の子が多くて女の子がひとりしかいなかったと聞いていたので、それもあってすごく歓迎してもらえたような気がします。子供たちがキャッキャ遊んでいる間に親同士でおしゃべりして、“こんな時はどうしてました?”とか聞ける子育ての先輩がいたのが本当に頼もしかった」
えりさん(元住人。入居中に長女誕生〜1歳半まで)
「育休明けで仕事に復帰した時に、同僚から“コロナだったし、子育て大変じゃなかった?”とか“どこにも出かけられなかったでしょ?”ってよく聞かれたけど、そういう悩みとか育児ノイローゼみたいなことを、まったく感じなかったんですよね。芝生に行けばいつも誰かしらいたし、娘とふたりきりの時間が全然なかったんじゃないかなと思うくらい」
スンコさん
「保育園から帰ってきてまだ外が明るいと、子供はもうちょっと遊びたいというか、家に帰りたくないんですよね。ここだとわざわざ会う約束をしなくても誰かしらに会えて、10分でも15分でも子供同士で一緒に遊びながら、親同士はちょっとおしゃべりができる。“井戸端会議”ってこういうことなんだって、すごく納得しました」
そんな住人同士のコミュニケーションが濃厚な関係だからなのか、高円寺アパートメントで育った子供たちには共通項があると、多くの住人が感じているようです。
ユキエさん(入居後に長男が誕生)
「全然、人見知りしないですよね。うちの子は“高円寺の人、みんな大好き”って言っていて、彼にとってはこのアパートメントのことが“高円寺”なんです。ここの人たちがみんなフレンドリーだから、知らない場所に出かけた時も、周りの子連れのご家族にグイグイ突撃していくんですよ。全然知らない人にも同じ調子で“ねえねえ、あのさ”って話しかけて、引かれるみたいな(笑)」
アヤコさん
「確かに、周りの大人たちに対する抵抗がないというのは感じますよね」
スンコさん
「周りの優しさを子供たちも察知しているから、ここだと誰にでもベタベタ甘えるじゃないですか。大人はみんないい人だと思っている」
ユキエさん
「育児中の友人から人見知や場所見知りがあって大変という話をよく聞くけど、ここで生まれた子たちはそういうのがほとんどないですよね。夫と私の子供なら絶対もっと内気になるはずだと思っていたのに、異様に性格が明るくて、これは住環境のせいだと思う(笑)」
ヒロシゲさん
「周りに迷惑をかけるのは決して良くはないけど、迷惑をかけることで関係が近づく場合もあるじゃないですか。本来は、そういうことが人間関係なんじゃないかなと思ったりもします」
スンコさん
「今はまだみんな可愛がって甘やかしてくれるけど、もうちょっと大きくなったら住人さんに怒られるような場面も出てくるのかなと思うんです。危ない遊び方をしていたり、人に迷惑をかけていたら、できれば叱ってほしいですし、可愛い可愛いという扱いだったのが、だんだん変化していくのも面白いんじゃないかな」
コロナ禍を前後して、子育て世帯が一気に増えた高円寺アパートメントでは、親同士のネットワークが密になり、情報交換やコミュニケーションの機会が盛んになっていきました。その代表的な例が、ベビー用品や子育てにまつわるいろんな品物が各家庭を循環するようになったことです。
やすしさん
「子育てで困ってることも不安なことも、たとえ親としてわずか1年先輩だったとしても、経験上わかることがあるじゃないですか。周りのご家族にもサポートできることはしてあげたいなと普段から思っていたので、子供の“おさがり”も割と自然なことというか。子供が特定の年齢の時期だけしか使わないものっていっぱいあって、絶対に必要なんだけど、それがすぐにいらなくなってしまう、その繰り返しなんです。欲しい人には本当に必要なものだから、それを譲って喜んでもらえるなら、もういくらでも差し上げますよと。うちで使わなくなったテレビの前に置く柵をユキエさんのところにお譲りしたんですけど、ユキエさんのところでも要らなくなったらまた別の家庭に渡って、確か今は4軒目か5軒目くらいまで渡り歩いているはずです(笑)」
スンコさん
「服の“おさがり”も知らない人からはもらいにくいなと思っちゃうけど、知っている仲だから“いいの? ありがとう”って。自分たちがもらっている分、“よかったら譲りますよ”というのもやりやすくて、うちの子が着ていた服を譲った相手の子が着ているのを、芝生で会った時なんかに見るわけですよね。それがたまらなく嬉しいですね」
高円寺アパートメントの子育て環境を象徴するようなエピソードは、他にもあります。アヤコさんに二人目の女の子が生まれ、長男を育てながら新生児の面倒をどうやってみようか悩んでいた時のことでした。
アヤコさん
「どうしてもワンオペになってしまうので、下の子の面倒を見ている時に長男の保育園の送り迎えをどうしようかと悩んでいたんです。区のファミリーサポートに申し込もうかという話を住人さんたちとしていたら、“まめくらし研究所”のサラさんや“いちまるいち”のわたるさんが“全然いいですよ、送り迎えに行きます”と言ってくれて、息子も普段から知っていて慣れてる人のほうがいいいだろうから、お言葉に甘えました。ひと月、ふた月の間くらいでしたけど、みなさんに交代で送り迎えをしていただいて、本当に助かりました」
サラさん(「まめくらし研究所」店主/女将)
「何かできることがあったら力になりたいなという話を“いちまるいち”のわたるさんともしていたので、困った時はお互いさまというか、将来、私も子供ができたら誰かに“手伝って”とお願いするかもしれないですし。アヤコさんのお子さんは、私たちが送り迎えすることを普段と違う特別なものと感じてくれたようで、一緒に帰りながらその日あったことを話してくれる時間が、とても楽しかったです」
えりさん
「引っ越してしまったら、もう高円寺アパートメントの人たちとは関われなくなるのかなと思っていたけど、イベントがある時とかに訪ねていってもすごく歓迎してもらえるし、反対に住人さんたちが今の新しい家に遊びに来てくれたりもして、ずっと友達のような関係が続いているのが、本当にすごいことだなと。娘も“高円寺が~”っていまだによく言うし、私はもう“第二の実家”だと思っています。知り合いに“前住んでいたアパートメントの人たちのところに遊びに行く”って説明すると、すごく驚かれるんですよね」
サラさん
「今までは部屋数や広さの関係で、お子さんが小学校に上がる前にみなさん引っ越されていく感じだったんですけど、今度、新しく小学校に上がるご家庭がいらっしゃるので、高円寺アパートメントに初めて小学生の住人が誕生することになりそうです」
ヒロシゲさん(長男の小学校入学を控える)
「子供が小学3年生ぐらいまでは、今のままでも全然平気かなと思っています。自分の部屋をつくってあげなきゃいけなくなる時にどうなるかなというのはありますけど、親がリラックスするための場所がなくなったとしても、なんとかここで暮らし続けたいなと」
やすしさん
「賃貸と持ち家それぞれのメリットデメリットを考えた時に、今のこの場所が安心できる環境だというのが一番大きいですよね。他の住人さんたちといい関係を築けていて、一緒に過ごす安心できる空間があることのメリットがとても大きいので、もうすぐ娘が小学校に上がってもここで暮らしていきたいなと思っています」
高円寺アパートメントで生まれている日常や関わりなどを住まい手目線でお伝えします。
暮らしているからこそ見えてくる、アパートメントの日々をのぞいてみてください。